|
謙吾は響が肩のキズのことをひどく気にしていることに、心を痛めていた。 今回の旅行もそんな響の気を紛らわせる為に連れてきたのだ。 今日、めずらしく誘うようにしてきた行為の最中さえも、響は、露わにした肩を手のひらで覆うように隠していた。 普段も決して上を脱ごうとしないし、風呂に一緒に入るのも嫌がる。 今も、わざと暗い場所に隠れるように湯に身を沈めている。 謙吾は苦々しい気持ちが込み上げてくるのをぐっと拳を握って抑えた。
謙吾が湯に入ってくるのが見えた。 どこも隠したりしない。堂々とその逞しい身体を見せつけるように自分の方に近づいてくる。 いつも見ても、見事という他はない均整のとれた肉体。 見惚れると同時に つい、その身体に欲情しそうになり響は慌てて目を反らした。 男に欲情する性癖ではなかったはずの自分が いつの間にか謙吾の身体を見て興奮を覚えるようになってしまっていた。 これは慣れなのか・・それとも条件反射? 「いい湯だな。」 横に来て謙吾が腰を下ろす。 「んーでも、俺そろそろ上がろうかな。 さっきまでは そうでもなかったけど、湯に浸かったら急にさっき飲んだお酒の酔いが回ってきたみたいだ。」 「それ程飲んでないだろ。」 「本当だってば。」 「酔いが回って立てなくなったら俺が抱いて上がってやるから心配するな。」 「冗談。」 そう言って立ち上がりかけた響の腕をぐいっと掴むと謙吾は強引に自分の膝の間に抱き込んでしまう。
「響・・」 名を呼ばれ、響は右肩に唇の濡れた柔らかな感触を感じた。 さーっと血の引く思いがした。咄嗟にキズを手で隠そうとしたが、強く抱き込まれて腕が動かせない。 その謙吾の唇が徐々に落ちて行きキズに触れる。 「やだ・・やめ・・」 堪えきれなくなって身をよじったが、がっしり捕まって逃げられない。 ゆっくりとそのキズを確かめるように謙吾の唇が何度も触れてくる。 「やだ。 そんなことするな。」 「響、もし・・そんなに気になるなら俺が 世界中から腕いい医者を探して連れてきて、こんなキズなんか無かったように消してやる。」 「・・・・・」 響はしばらく無言で俯いていた後 ぽつりと言った。 「俺、謙吾が消して欲しいならそうする。」 「響がそうしたいんじゃないのか?」 「俺は、傷のことなんか気にしてない。 気にしてるのは 謙吾の方だろ?」 「どうしてだ?」 「香西先生がそう言ってた。俺が気にしなくても、謙吾は気にするだろうって、それに・・ 初めてこのキズを見た時、謙吾すごく嫌なものを見るような目で見てたじゃないか!」
『全部 俺のせいだったのか・・』 謙吾は、またしても自分が大きな勘違いをしていたことに気づく。 それにしても・・香西の奴また余計なことを響に吹き込みやがって。 香西に対して怒りが込み上げてきた謙吾だったが、ぐっと堪えて、響には笑ってみせた。 「嫌なものだなんて俺はそんな目で見たつもりはねぇぞ。 ただ、そのキズを見ちまうと俺自身に腹は立ったな。 どうしておまえにこんなキズ付けさせちまったのかなってな。」 「謙吾のせいなんかじゃない。 自分で勝手にしたって言っただろう?だからそんな負い目なんか感じて欲しくない。 それに・・ さっき謙吾に『こんなキズ消す』って言われて、正直ちょっとショックだった。 確かに醜いキズかもしれないけど、俺にとって このキズは俺が謙吾を愛してる証拠のようなものだから・・・」 「俺を愛してる証拠なぁ 確かにそうだな。」 『なら一生消えない方がいい。』
ニヤッ笑った謙吾の顔を見て、そこで初めて響は自分が口を滑らせてしまったことに気づいた。 「今度は、俺が響を愛している証拠を見たくないか?」 「いいよ。見たくないから」 響はバチャバチャと水しぶきを上げて慌てて逃げようとするが遅かった。 「あっ・・」 「さっきは時間がなかったから一回しか出来なかったしな 一回じゃおまえも足りなかっただろ?ん?」 そんなことを耳元で囁かれてカーッと頬に赤みが増す。 「ここじゃ・・やだ。 広中さんたちに聞こえる。」 身体を弄ってくる手に必死で耐えながら、響はそんなことを言うのが精一杯だった。 「仕方がねぇな。 まぁ、奴らに響の声聞かせるのは勿体ねぇか。 それにまだ俺に隠していることがいろいろありそうだしな。 今夜はそれをゆっくり聞かせてもらうとするか・・」 「もう、何もないって。」 「おまえは信用できないからな。」 「それはお互いさまだろ。」 お互い自分の思っていることを口にしない二人は、とにかく誤解することが多い
でも・・だからって、
「んんっ、ああ・・やだ・・謙吾もう・・」 「もう・・なんだ? 言わないと響のして欲しいこと 俺にはわからないぞ。」 「んんっ」 奥の寝室にひかれた布団の上、さっきから響は、狂おしいほどの快感の波に身体を大きく震わせながら、謙吾のこの意地悪に耐えていた。 「あっ・・あっ・・けん・・ご・・早く・・」 「早くって何をだ?ん?」 もうすでに3本の指を咥えたそこは、指の刺激だけでは足りないとばかりにぎゅうぎゅう締め付けてくる。トドメとばかりに指を曲げて前立腺を押してやると、 「あ――つ、や・・や・・」 イヤイヤするように、大きく頭を振る。 もう限界だろう・・ そういう謙吾も限界を疾うに超えている それでもどうしても響の口から言わせたいのだ。
「挿(い)れて――」 結局負けたのは響の方だった。 謙吾は指を抜くと自分のいきり立った雄を一気に響の中に挿入した。
|